日本財団 図書館


4. 対応の方向性についての考察

4-1 設備的な対応における留意点
現状のターミナル駅で提供している情報内容には、移動系、手続系、列車系、異常時系の別があるが、これまでみてきたように、特に利用者の「移動」を支えるビジュアル・サインにおいて、対応の現状と基本的なニーズとの間に大きな隔たりがある。
ここでは、移動系のビジュアル・サインについて、その対応の方向性を考察する。
1.案内域の設定
1)第1章の利用者動線の検討からわかるように、ターミナル駅利用における利用者動線は、「駅出入口」を大きな節目として変化する。
即ちその内側では、結節している複数の鉄道利用を基本とした定型的な移動が行われ、その外側では、街の中へ無数に分散していく移動がある。
また駅出入口は、街の東西(南北)を結ぶ動線の起点でもある。
つまりターミナル駅は、「駅出入口」を街との接点とした、連続的で制御可能な空間である。
2)現状では、鉄道会社毎に管理エリアが定められ、エリア毎に鉄道会社が独自の方法で、利用者の移動を支援する枠組みが採られている。
つまり鉄道会社が管理・制御できるエリアは、ターミナル駅の一部分に限定されている。
3)この点に連続的な空間全体を対象とした計画が行なわれにくい基本的な理由がある。
4)ターミナル駅内での、利用者の円滑な移動を確保するためには、ターミナル駅全体を一つの案内域とみなす視点が求められる。

 

2.サインシステムの構成
1)移動系に限ってみても、ターミナル駅で求められる情報の量はぼう大である。
これを構内の所々で表現して、円滑な移動を確保するためには、
a.選択した情報内容にプライオリティを与えて表現したサイン様式の種別
b.情報を総括的に、また連続的に提供するサイン種別毎の配置位置をそれぞれ定めて、サインシステムを構成する必要がある。
2)移動に必要なメッセージは、「誘導情報」「位置情報」「案内情報」の3種類であることは、第1項でみたとおりである。
利用者は「誘導情報」によって方向指示を得て、「位置情報」によってそれであることを確認する。
また「案内情報」によって全体的な関係性を把握する。
サインシステムとして、このそれぞれに適切な様式を与えて、
a.誘導情報を表現する「誘導サイン」
b.位置情報を表現する「位置サイン」
c.案内情報を表現する「案内サイン」を設定する方法が考えられる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION